気候変動を含む環境問題は、ニッタ・デュポンにとっての重要な経営課題の一つであると認識。具体的な環境関連の社内体制として、環境管理や省エネ活動を推進していくことを目的に「環境委員会(月1回開催)」と「省エネ委員会(年4回開催)」を設置しています。
ニッタ・デュポンは、「ADVANCED SURFACE CREATION™」というスローガンのもと、エレクトロニクス産業のキーデバイスである「半導体」や「シリコンウェーハ」生産の最適表面創出のための先端研磨技術を日本国内やアジア全域を中心にグローバルに提供しデジタル社会の発展に貢献することを使命としています。
現代社会のあらゆる分野で重要な役割を果たす半導体産業の最先端技術をステークホルダーの皆様に円滑にお届けしていくにあたり、気候変動を含む環境問題は当社にとっての重要な経営課題の一つであると認識しています。気候変動がもたらす影響を認識し戦略策定やリスクマネジメントの実施によりレジリエンス性の高い事業運営を目指すため、TCFD(気候関連財務情報タスクフォース)の提言に基づいた取り組みと情報開示を行っています。
当社では、気候変動を含む環境課題に関するリスク・機会、目標や具体的な取り組み施策について、当社代表取締役社長が統括し、その責任を負うこととしています。
具体的な環境関連の社内体制としましては、環境管理や省エネ活動を推進していくことを目的に「環境委員会(月1回開催)」と「省エネ委員会(年4回開催)」を設置しています。「環境委員会」は、環境保全責任者や環境推進責任者によって運営され、環境データへのレビューや、状況報告などを実施します。「省エネ委員会」は環境推進責任者や各事業部門の代表者によって運営され、環境委員会や各事業部門より報告もしくは共有された情報をもとに、脱炭素化に向けた具体的施策の検討、リスク機会の分析評価結果の審議や活動方針の検討を行います。
省エネ委員会で検討された気候変動関連のリスク及び機会、またその対応方針については、上位の会議体であり当社代表取締役が委員長を務める「NDLTミーティング」に報告されます。NDLTミーティングは気候変動対応の監督機関として、気候変動課題を含めた重要課題に関する審議内容について承認を行っています。
一連の取り組み状況については年2回の取締役会に報告を行うこととしており、その内容を考慮した上で、重要な事項について審議し、決定しています。
当社では、事業において気候変動が将来及ぼす影響を明確し事業戦略に織り込むこと目的として、シナリオ分析を活用しています。
2024年に実施したシナリオ分析では、気候変動によって生じるリスクと機会を包括的に把握することを目的に、その結果とともに外部機関の公表する複数のシナリオを用い、「世界の平均気温が産業革命期以前の世界平均気温と比較して4℃以上上昇する」場合と、「パリ協定に基づき、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える」場合の2つの世界観を想定し、当社が気候変動課題によって受ける影響を、サプライチェーンを含め網羅的に考察しています。考察対象時間軸については、政府によって削減目標数値が具体的に設定されている2030年時点と、パリ協定における目標年度である2050年時点を対象としました。また、世界観の構築にあたっては以下のシナリオ群を参考としています。
4℃シナリオ | 1.5℃シナリオ |
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参考シナリオ
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参考シナリオ
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考えうる「リスク」「機会」について、設定したシナリオを構築するにあたり参考とした各シナリオ群の中でそのような顕在化経緯及び程度感が想定されるかを調査し、その影響の大きさと、発生する時期を考慮して重要性を検討しています。その検討の結果、次の表に示すようなリスクや機会を特定しました。
要因 | 区分 | 事業への影響 | 時間軸 | 評価 | ||
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移行 | 政策・ 規制 |
カーボン プライシング |
リスク |
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中期~長期 | 中 |
プラスチック規制 | リスク |
|
中期~長期 | 大 | ||
再エネ・ 省エネ政策 |
リスク |
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短期~長期 | 中 | ||
機会 |
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短期~長期 | 大 | |||
市場 | エネルギー ミックス・コストの 変化 |
リスク |
|
短期 | 中 | |
原材料コストの 変化 |
リスク |
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長期 | 大 | ||
重要商品の 需要変化 |
機会 |
|
短期~中期 | 大 | ||
顧客行動変化 | リスク |
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中期 | 中 | ||
機会 |
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短期~中期 | 中 | |||
評判 | 顧客の評判変化 | リスク |
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中期 | 中 | |
物理 | 急性 | 干ばつ | リスク |
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中期 | 小 |
異常気象・ 気象パターンの 変化 |
リスク |
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短期~中期 | 大 |
このシナリオでは、現行の気候関連目標や政策による規制レベルの引き上げは行われず、温暖化による物理的な影響が深刻化することが想定されます。当社拠点はすべて日本国内に所在するため、特に異常気象による洪水をはじめとした風水災害による影響が懸念されます。また、当社が販売する製品は半導体製造工程用の研磨剤など、半導体関連製品の取り扱いが多くありますが、半導体製造の工程では水を大量に使用することが想定されることから、お取引先における干ばつ等の水に関連する物理的影響も想定されます。これらの物理的影響が頻発化・激甚化する場合には、直接的な損害の発生や、お取引先を含む営業停止によって収益への影響も懸念されるなど、財務的な影響も大きくなる可能性が想定されます。
このシナリオでは、パリ協定及びグラスゴー気候合意に基づく1.5℃目標の達成に向けて、政府による新たな政策や規制の施行や、市場での脱炭素化への取り組み強化など、脱炭素化への移行努力が盛んに行われることが想定されます。
当社では研磨剤の製造にはシリカやプラスチックといった原料を使用しますが、その原料製造工程からは比較的多くの温室効果ガス排出量を伴います。各国において、脱炭素化に向けた規制としてカーボンプライシング制度が導入されるなど、市場取引においても脱炭素化志向が強まる場合、サプライチェーン排出量の大きさによって、追加的な税支出や、バイオマス化や廃棄物処理に関する追加的な対応が求められることで、直接的な費用の増加や、サプライヤーの販売価格への追加費用分の価格転嫁がなされるリスクが想定されます。また、当社では工場の稼働には主に電力を使用していますが、世界的に再生可能エネルギーへのニーズの高まりにより、発電施設の建設や、従来発電方法よりも発電コストが高騰により、電力価格が上昇することで当社の操業コスト増加につながることも想定されます。
一方で、上述の通り再生可能エネルギー電力の発電設備の建設ニーズをはじめ、自動車のEV化に代表される脱炭素技術の普及により、半導体の需要が増加することも想定されます。パワー半導体は様々な分野における製品の消費電力削減に寄与するとされており、そのニーズ拡大に伴って当社が提供する半導体関連製品の売り上げが増加することも期待されます。
以上のシナリオ分析の結果を踏まえ、当社では気候変動影響に対する適応と緩和の双方で、対策を講じる必要性を認識しています。現在の取り組みとして、京都工場では脱炭素化に向けた施策の1つとして工場内で使用する電力を100%再生可能エネルギー電力へ切り替えを実施しており、他工場においても同様に再エネ化を検討しております。物理リスクへの対策においては、予防措置を含むBCPや復旧時の対応を示した事業継続計画に基づき、研修や訓練、具体的施策を実施しています。計画には調達先分散や配送問題など、自然災害におけるリスクに対する対応が含まれており、気候変動による物理的影響の緩和も念頭として計画を策定、また適宜見直しを実施しています。また機会については、親会社であるニッタ株式会社と協力し環境配慮製品の開発に取り組んでおります 今後も引き続き、ステークホルダーからの要請内容や社会的な動向を注視しつつ、2050年のカーボンニュートラル達成や、気候変動影響の緩和に向けて、具体的な脱炭素施策の取組を進めてまいります。
当社では、省エネ委員会にて、気候変動に関する不確実なリスクの識別、評価、管理の一連のプロセスを主管しています。リスクの識別及び評価に際しては、各事業部門からの報告を集約するほか、シナリオ分析の手法を活用し、その報告及び分析結果から重要課題の特定を行っています。具体的には、報告や分析から洗い出された課題事項を、関連する経済活動の大きさ(仕入れ量や売上高)と、発生時期及び可能性の2軸評価のマトリクス図にマッピングの上、優先的に対応を必要とするリスクを特定しています。特定されたリスクは必要に応じ対応策の検討や目標設定を実施し、また、定期的にその見直しを行うことでリスクの防止、回避、もしくは影響の緩和を図っています。
検討した事項は全社的なリスク管理との統合を目的として、上位の会議体である「NDLTミーティング」に共有されます。NDLTミーティングでは、各事業部や各委員会で協議された事項を集約し、当社の方針・運営に関わる内容を網羅的に管理しています。気候変動に関するリスク及び機会の評価結果についても必要に応じて考慮し、当該会議体の中で戦略や全社的なリスク管理プロセスへ統合することとしています。なお、決定した事項については、取締役会に報告されます。
当社のGHG排出量の実績値は以下の表のとおりです。今後、シナリオ分析の結果やステークホルダーとのコミュニケーションも踏まえ、必要な開示指標及び目標を検討し設定するとともに、脱炭素化への移行に向けた取り組みの具体化を図ってまいります。
当社は、生産段階における温室効果ガス(以下、「GHG」とします)排出量の削減に関する基本方針を、2030年度までに2013年度比46%削減、2050年度までに「カーボンニュートラル実現」を目指すと定め、その実現に向けて取り組んでいます。GHG排出量削減のために
①エネルギー使用量自体を削減する省エネの徹底
②再生可能エネルギーの活用拡大
③GHGフリーエネルギーの購入の3つの視点で取り組んでいます。
現在、GHG排出量の算定を行っており、公開準備を進めております。